唾液中カンジダ菌のPCR定量による免疫力・健康状態の測定法 について
本技術は、遺伝子増幅法(PCR)で唾液中のカンジダ菌量を定量し、その値から全身の免疫力・疾患活動性を評価する非侵襲的な検査方法です。信州大学医学部・栗田浩教授らが、唾液(口腔内)のカンジダ菌量が、免疫力スコア(SIV)や疾患活動性スコア(PhGA)などの健康・免疫指標と相関することを見出しました。採血が不要で、PCRにより C. albicans に加え C. glabrata や C. parapsilosis 等の複数菌種を高感度に定量できるのが特長です。小型PCRを用いればその場で短時間(約15分)の検査も見込め、医療・介護現場での健康モニタリングへの応用が期待されます(特許出願中:特願2025-040288/Hashidume et al., J. Oral Maxillofac. Surg. Med. Pathol. 2026)。
唾液中カンジダ菌PCR定量による健康・免疫力の測定方法 について
- 免疫力は健康の維持・病気の予防や早期発見に重要だが、客観的に評価する手段は限られていた。免疫力評価の主流である血液検査(SIVスコア等)は採血が必要で、医療機関等でしか行えず、簡便性に課題があった。
- 唾液を用いる非侵襲的な方法として唾液カンジダマンナン抗原法があるが、測定できるカンジダ菌の種類・量が限られて精度に改善の余地があり、検査に時間がかかる(2時間程度)という課題があった。
- 本技術は、遺伝子増幅法(PCR)で唾液中のカンジダ菌量を定量し、その定量値に基づいて免疫力・疾患活動性の大小を評価するという検査方法である。唾液という非侵襲的な検体を用いながら、PCRという高感度な定量原理を組み合わせた点に特徴がある。
- 信州大学医学部・栗田浩教授らは、健常者・がん患者・自己免疫疾患患者を対象とした研究を通じて、この唾液中カンジダ菌量と全身の健康・免疫指標との相関関係を確認し、検査法として体系化した。
比較
唾液PCR定量(本技術) vs 従来の検査法
※「約15分」は小型PCRを用いた迅速測定を想定した開発目標値です。検査時間・測定条件は装置・プロトコルにより異なります。
EFFECTS
技術の効果
- 健常者を対象とした検討では、唾液中カンジダ菌量と悪寒の程度との間に正の相関(相関係数 r=0.608)が確認された。
- がん患者を対象とした検討では、唾液中カンジダ菌量と免疫力スコア(SIVスコア)との間に負の相関(r=-0.504)が確認された(菌量が多いほど免疫力が低い傾向)。
- 自己免疫疾患患者を対象とした検討では、唾液中カンジダ菌量と疾患活動性スコア(PhGAスコア)との間に正の相関が確認された(菌量が多いほど疾患活動性が高い傾向)。
- これらの結果から、唾液という非侵襲的な検体から、全身の免疫力・疾患活動性を推定できる可能性が示された(少数例によるパイロット研究)。
KEY POINTS
技術のポイント
- 健常者に限らず、がん患者・自己免疫疾患患者など多様な対象群を通じて相関関係を確認
- 本検査方法・検査キットについて特許出願中(特願2025-040288)
- 実用化に向け、測定装置・簡易測定キットの開発を進行中
USE CASES
想定される用途/実績例
- 医療現場での健康・免疫状態の評価(病状の把握、退院時期の判断など)
- 介護現場での要介護者の健康状態管理(外出・入浴の判断、継続的モニタリング)
- 日常的な健康・免疫状態のセルフチェック(簡易測定キットの実用化時)
- 感染症罹患リスク等の簡便なスクリーニング
FAQ
よくある質問
唾液中のカンジダ菌量から、なぜ免疫力や健康状態がわかるのですか?
カンジダ菌は口腔内の常在菌ですが、全身状態や免疫力が低下すると口腔内で増えやすくなります。信州大学医学部・栗田浩教授らは、唾液(口腔内)のカンジダ菌量が、体調や免疫力・疾患活動性を表す指標と一定の相関を示すことを見出しました。この相関を利用し、唾液中のカンジダ菌量を定量することで、全身の免疫力・疾患活動性の大小を評価しようとするのが本技術です。
従来の免疫力検査にはどのような課題がありましたか?
免疫力評価の主流である血液検査(免疫力スコアSIVの測定など)は、精度が高い一方で採血が必要なため、医療機関等でしか行えず、簡便性に課題がありました。また、唾液を用いる非侵襲的な方法として唾液カンジダマンナン抗原法がありますが、測定できるカンジダ菌の種類・量が限られて精度に改善の余地があり、検査に2時間程度かかるという課題がありました。
どのような相関関係が確認されているのですか?
信州大学の研究では、唾液中カンジダ菌量と全身の健康・免疫指標との相関が、対象群ごとに確認されています。健常者では菌量と悪寒の程度に正の相関(相関係数 r=0.608)、がん患者では菌量と免疫力スコア(SIVスコア)に負の相関(r=-0.504。菌量が多いほど免疫力が低い傾向)、自己免疫疾患患者では菌量と疾患活動性スコア(PhGAスコア)に正の相関(菌量が多いほど疾患活動性が高い傾向)が示されました。なお本研究は少数例によるパイロット研究であり、さらなる検証が進められています。
どのカンジダ菌種を測定でき、なぜ精度が向上するのですか?
本技術はPCR(遺伝子増幅法)でカンジダ菌のDNAを標的に定量するため、最優勢種である C. albicans に加えて、C. glabrata、C. parapsilosis、C. tropicalis、C. guilliermondii なども対象にできます。抗原の発色度合いで判定する従来の抗原法に比べ、対象菌種を広げつつ高感度に定量できるため、測定精度の向上が期待されます。
唾液カンジダマンナン抗原法とは何が違うのですか?
唾液カンジダマンナン抗原法は、カンジダの細胞壁成分(マンナン抗原)を発色剤の発色度合いで検出する方法で、測定できる菌種・量が限られ、検査に2時間程度を要します。一方、本技術はカンジダ菌のDNAをPCRで直接定量するため、複数菌種を高感度に定量でき、小型PCRを用いればその場で短時間の測定も見込めます。両者はいずれも唾液を用いる非侵襲検査という共通点はありますが、測定原理と精度・迅速性が異なります。
SIVスコア・PhGAスコアとは何ですか?
SIVスコア(Scoring of Immunological Vigor)は、血液中のリンパ球サブセット(T細胞数、NK細胞数、B細胞数、CD4/CD8比など複数項目)をスコア化して合計する、免疫力を総合的に定量した指標です。PhGAスコア(Physician’s Global Assessment)は、医師が患者の疾患活動性を全般的に評価する指標で、関節リウマチや全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫疾患で広く用いられます。本技術は、唾液中カンジダ菌量がこれらの確立した指標と相関することを利用しています。
どのような応用が想定されますか?
医療現場での病状・免疫状態の評価や退院時期の判断、介護現場での要介護者の健康状態管理(外出・入浴の判断、継続的モニタリング)などが想定されます。また、簡易測定キットが実用化されれば日常的な健康・免疫状態のセルフチェックへの展開も期待されます。現在、測定装置・簡易測定キットの実用化に向け、共同開発いただける企業を募集しています。
共同研究や技術相談はどこに問い合わせればよいですか?
本ページ下部の「お問い合わせフォーム」、またはお問い合わせページよりご連絡ください。株式会社 信州TLO が、産学連携による製品開発・共同研究・ライセンス等について、最適な形でご提案いたします。
基本情報
- 研究者
- 信州大学 医学部 歯科口腔外科学 教授 栗田 浩
- 発明の名称
- 免疫力または疾患活動性を検査する検査方法および検査キット
- 出願番号
- 特願2025-040288
- 出願人
- 国立大学法人信州大学
- 論文
- Hashidume M, Sakai H, Kajihara R, Sakai Y, Ichikawa T, Shimojima Y, Kurita H. "Oral Candida counts reflect host health and immune condition: A pilot study." J Oral Maxillofac Surg Med Pathol. 2026;38(4):673-680.
- 論文URL
- https://doi.org/10.1016/j.ajoms.2026.01.014
